自然豊かなまちのビオトープからの提言
〜子どもたちがまちをひらく〜



 但馬といえば、多くの人々が「自然が豊かな地域ですね」とイメージするとおり、私が生まれ育った但東町も面積の88%は山林におおわれ、水のきれいなまちです。この豊かな自然のなかで、但東町子ども会連絡協議会が環境学習プログラム活動「ぶなっこクラブ」を展開して6年目を迎えました。自然に親しみ、自然のなかで遊びながら人と環境とのつながりなどを学び、将来子どもたちが「私のふるさとは但東町です」と大いに自慢できるまちをつくろうというのがねらいです。そして、平成11年からはビオトープづくりに取組んでいます。ビオトープとは、Bio(生物)とTop(場所)の合成語で「生物の生息空間」を意味しますが、つまり、地球そのものがビオトープといえます。
 しかし、多くの人が「なぜ、自然豊かなまちでビオトープなのか。」、「但東町全体がビオトープじゃないですか。」と、不思議に思われました。確かに一見そのように見えても、暮らしの中での自然とのかかわりは大きく変化しています。エネルギーは木炭からガスに変わり、山での生産活動はなくなりました。水田は生産効率を上げるため整備されましたが、谷間の不便な田んぼは放棄されています。川の護岸はコンクリートで固められ、川を利用し、遊ぶ子どもの姿もあまりみかけなくなりました。つまり、自然とともに、自然のなかで、自然の恩恵を受けて、自然に感謝するという昔ながらの暮らしは薄れてしまい、自然に対する価値観も変わったように思います。
 手つかずの自然が多いということも自然が豊かであるといいますが、人が暮らす「まち」という視点では、むしろ自然と共生する暮らしこそ豊かな自然といえるのではないでしょうか。
 さらに、そこに暮らす人々の生活様式の変化は、身近な自然とのかかわりだけでなく、地域とのつながりも希薄になりつつあるのではないでしょうか。
 このようなことから、自然との共生を体感できるものとして、ビオトープ池づくりがはじまったのです。場所は、但東町平田の「子ども自然村」に近い、昔畑であった空き地を借りました。背丈以上の草が生い茂るその場所を見て、子どもたちは「こんな池をつくろう」と絵を描くかたわらで、おとなちは「冗談だろ、こんな所に池を掘るのか」と不安を隠せませんでした。小さな子どもから大人まで、そしてボランティアでかかわってくれた多くの若者の力で、池は完成しました。小さな池ですが、多くの人の思いが託され、共に汗を流してつくりあげた喜びはひとしおでした。近くの溝から水を引き入れ、池に水が入り込んだとき、子どもたちの「ヤッター」という歓声があがり、みんなでぐるっと池を囲んで水の溜まるようすをながめていました。
 さらに、今年はこの池のすぐ真下に、水田ビオトープをつくりました。子どもたち自身の考えで稲を育ててみようと、稲の作り方をお父さんなどから聞いて取組んでいます。苗を鹿に食べられたりもしましたが、果たして実るのか、子どもたちなりに世話を続けています。
 このビオトープの活動は、当然ながらただ池をつくるだけのものではありません。池づくりを通じて、子どもたちと地域のつながりを考えるとともに、やがて池に植物や生き物が宿るなど、身近な自然の復元を確認できることから、自然の多様性や環境といろいろな生き物とのつながりなどを考える場所としての活用を図ることが課題です。また、子どもたちによる環境学習の活動は、「むらおこし」の活動でもあります。子どもたちの視点で、地域のみんなが協力すれば、自分が暮らすまちを変えることもできるのだという確証を持つことができるよう、さらにこの池が地域のシンボルになるよう、近い将来池を中心に多くの人が集うお祭りができればと考えています。子どもたちがまちをひらく―自然豊かなまちのビオトープからの提案です。

(この原稿は、2001年1月1日に但馬文化協会・(財)但馬ふるさとづくり協会が発行された「21世紀を拓く但馬人への提言」に掲載されたものです。)
※「21世紀を拓く但馬人への提言」(A5版、約250頁、1500円)をご注文される場合は、県立但馬文教府(豊岡市妙楽寺41-1 電話 0796-22-4407)へお申し込みください。


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